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山買い

山買い_f0289033_10421714.jpg備長炭の原材料のカシが生えている山をカシ山という。
カシ山は20年~40年のサイクルで、江戸時代から伐り続けられてきた。
カシは植林しなくても、伐ったその切り株から発芽する。(「ひこばえ」という)
適切なサイクルで伐り続けられた山では、一株から何本も幹が伸びている。
最高のカシ山とは、一升瓶位の太さの幹が根元から5,6本以上伸びていて、
その1本1本が7,8玉取ることができる長さがあり、さらにカシ以外の雑木の少ないような山。
要は仕事の早くできる山がいい山である。

カシ山の立木だけを炭焼きさんは買う。山買いという。
カシ山は、市場があって売られているわけではないので、
自分で探すか、人から紹介してもらうかして調達する。
時間の余っている時は、普段入ったことのない林道を走って、カシ山を探すことになる。
こうやって探し当てたカシ山を、今度は誰のものか特定していく。
近くに人がいれば、その人に聞いてみる。
山奥で誰も来ないようなところだと、地形図に場所を落として森林組合で聞く。

誰のものか分かったら、交渉だ。
杉、檜等の針葉樹の場合は1本1本太さを計り、一山の材積を出してから値段交渉になるので、だいたいのところに収まっていく。
これに対しカシ山の材積は、山を見た感覚が頼りなので、売り手と買い手の双方の折り合いをつけるのはなかなか難しい。
こちらが経験上、10台(100トン分)位しかない、と主張しても、山主さんに15台あると言われたら、
その溝を埋めるのはなかなか大変である。
あいまいなままで値段交渉をすることになるので、山主さんによってはふっかけてくることもある。
またそんな駆け引き自体が楽しくて仕方がないという山主さんもいるから、こちらも頭を使う。
その上、こちらが方言を理解できないこともある。なかなか大変だ。

数々の難関を乗り越えないと、原材料の調達はできない。
伐ってみて予想外にカシが少なかった、搬出に手がかかったとなると、とたんに収益は悪化する。
炭焼きで一番難しいのは、山買いではないかと思うこともあります。
by binchosan | 2013-06-19 20:44 | 木伐り

紀州備長炭、土佐備長炭と並ぶ三大備長炭の産地、日向。日向の国、宮崎県の宇納間で備長炭を焼いています。お問合せは domasama8080@gmail.com


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